オーストラリア・レールトレイルを往く

オーストラリア・ビクトリア州はかつて鉄道の宝庫であった。1850年代のゴールドラッシュを経て19世紀後半には鉄道ブームが巻き起こり、港から大都市、大都市から金鉱の町、そして大都市と郊外を網の目のように結んでいったのだった。かつて・・・というのは、1960年代以降のモータリゼーション進展とともに、急速に経営を悪化させた地方鉄道・支線は1980年を迎えるころに大部分が廃線となってしまうからである。

しかし、その一部がレールトレイルとして復活した。レールトレイルとはかつての鉄道軌道の跡を再整備してサイクリストと歩行者に提供している遊歩道・サイクリング道である。都市近郊の10キロ程度の手軽な距離のものから、中にはグレートビクトリアン・レールトレイルのように全長150キロを越えるものまである。

かつてオーストラリアに鉄道の黄金時代があったこと、先人が巨額の資金と大変な労力をかけて鉄道網の建設に取り組み、鉄道がオーストラリアの初期の経済発展を支えたという歴史と記憶を後世に伝えたいという人々の思いから、レールトレイルの形で鉄道遺構の再整備がすすめられたものだ。レールトレイルはビクトリア州を中心にオーストラリア全体で50以上ある。


グレートビクトリアン・レールトレイル(The Great Victorian rail Trail)

かつてはシドニー~メルボルンを結ぶ北部幹線の途中駅タラロック駅を起点としてガルバン渓谷沿いにマンスフィールドの町まで途中急こう配区間を含む約150キロをガルバン渓谷鉄道が走っていた。


リリデール・ウォーバートン・レールトレイル(The Warburton Rail Trail)

ヤラ川の上流、牧場とワイナリーの続くUpper Yarraエリアの最奥に位置するのがウォーバートンの町である。かつてはウォーバートン鉄道が人々と物資を運んでいた。このレールトレイルを走り、春の訪れを感じた。


ポートフェアリー・レールトレイル(The Warrnambool to Port Fairy Rail Trail)はビクトリア州西部の小さな美しい港町へと続くレールトレイルである。19世紀半ばにはビクトリア州西部地域の玄関口として栄えた町は、今、古い町並みを残しつつ美しいビーチの別荘地のある町として知られている。


ギブスランド・プレーンズ・レールトレイル(The Gippsland Plains Rail Trail)はビクトリア州東部の農業牧畜地帯を走る。かつては旅客輸送に加えて農産物や家畜の出荷に活躍した鉄道の軌道跡約70キロの未舗装トレイルである。


マレー・トゥー・マウンテンズ・レールトレイル(Murray to Mountains Rail Trail)はビクトリア州北部の中心都市ワンガラッタと金鉱の町ブライトを結んでいたブライト線と、途中のエヴァートン駅から分岐してビーチワースへと向かうビーチワース線の軌道をたどるレールトレイルだ。かつて金が産出されていたころは旅客と物資を運びにぎわったというが、今は昔日のおもかげはなく、ひたすら牧場が広がるのどかな風景である。


バララット・スキップトン・レールトレイル(The Ballarat-Skipton Rail Trail)

メルボルンから鉄道で北へ約1時間半、ゴールドラッシュの町 バララットを中心にかつて『ゴールドフィールド』と呼ばれたエリアが広がる。ここにはバララットを起点に金鉱の町を結んでいた鉄道があった。その鉄道軌道跡が『バララット・スキップトン・レールトレイル』として整備されている。全長約60キロの人気レールトレイルである。有名な木造トラス橋があり、自転車が通れるようになっている。


バスコースト・レールトレイル

BASS COAST RAIL TRAILへ行ってきた。メルボルン南東約130キロにある人気のレールトレイルだ。ビクトリア州の数あるレールトレイルの中で特に風光明媚なルートとして有名である。元はビクトリア鉄道のWonthaggi支線、1910年に主に旅客輸送と石炭輸送を目的として建設され1978年に廃線となった。鉄道軌道は1988年に解体されたが、その際、南半分の区間(アンダーソン~ウォンサッギ)17キロが記憶遺産『バスコースト・レールトレイル』として整備されることになった。



あなたもオーストラリアでレールトレイルを走って、大自然と鉄道の歴史を体感してみませんか。


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