ブロンプトンで幕川温泉

幕川温泉は土湯温泉からさらに距離20キロほど吾妻連峰の山懐に深く入り込んだ谷の最奥にある。水戸屋旅館と吉倉屋旅館の二軒のひなびた秘湯宿が源泉を分け合っている。公共交通機関は土湯温泉までのバスがあるだけだ。土湯からタクシーだと相当かかるので、フツーの人は車で行くしかない。ただ、県道から分岐した最後の4キロは車の離合さえ難しい狭くて険しい林道となる。

かようにアクセス困難な秘湯だが、オーストラリアにて鍛え上げてきた脚力を発揮すべく、ためらうことなくブロンプトンで行ってしまうのである。

早朝、新幹線で東京駅から輪行出発、福島駅からは土湯温泉行きのバスに乗り、土湯温泉入り口バス停で下車、そこからブロンプトンでスタートした。

幕川温泉は標高1317メートルにある。標高500メートルの土湯温泉からだと標高差は800メートル以上。総距離は22キロなので平均斜度は3.8%だが、難関は前半だ。最初の12キロの平均斜度は5.6%とけっこうキツイ。ガーミンの斜度表示も7%台、8%台に達したりする。

山の色付きを楽しむ余裕もない。ところどころ斜度が緩む箇所で息を整える。

1000メートルを越えると紅葉は終了気味だ。

漸く幕川温泉への分岐に到着した。

林道に入ると紅葉は終わりかけていたが、カラマツの黄葉と青空のコントラストが美しい。


最後の急坂をこなすと幕川温泉水戸屋旅館が見えてきた。


水戸屋に着いた。二種類の絶品硫黄泉で絶大な人気を誇る秘湯宿だ。昔、山形県の滑川温泉で入浴中に出会った温泉に相当詳しい福島のオジサンが『マッカワ温泉が一番だ』と言っていた。期待感が高まる。


女将さんに日帰りをお願いして、まずは渓流露天風呂「さえりの湯」へと向かう。渓流のほとりに絶品の白濁の湯が待っていてくれました。掛け湯をしてさっそく頂きます。

さえりの湯で小一時間ほど過ごした後、いよいよ名物の展望風呂へ行く。ひょうたん型の展望露天風呂は推定樹齢800年の檜の輪切りをくり抜いて、二つ繋げて作られた一番人気の湯舟で、このような素晴らしいロケーションにある。山はすっかり冬支度だ。見えているのは東吾妻山、標高1975メートル。

さえりの湯と異なり、薄くにごった湯に細かい湯の華が舞っている。

紅葉シーズンが既に終了しているせいか、それとも早い時間のせいか、人気の湯も非常に空いており、独泉状態の瞬間さえもある。名湯に浸かりつつカラマツ林からの涼風に吹かれるのは最高の気分だ。

極楽極楽。いつもの炭酸水を飲もうか。

吾妻連峰の山懐で最高の秘湯経験となった。


ブロンプトンでどこまでも

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